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コラム

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情シス部門とDX推進部門の役割分担と連携のコツ

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情シス部門とDX推進部門の役割分担と連携のコツ

【この記事の要約】

  • 情シスは「止めないこと」、DX推進部門は「試すこと」で評価されます。この評価軸の非対称性がすれ違いの正体です。
  • IPAの調査では、AI導入の効果は業務効率化が91.6%に達する一方、売上・利益の向上は3.9%。分業の固定化は、成果を効率化の段階で頭打ちにします。
  • 有効なのは細かい線引きよりも、両部門が同じものさしで評価される仕組みを先に置くことです。

⏱ 読了目安:約7分

1. 情シス部門とDX推進部門は、何が違うのか

情報システム部門(情シス)とは、社内システムの企画・構築・運用・保守と、セキュリティを含むIT基盤の安定稼働に責任を持つ組織です。一方のDX推進部門とは、デジタル技術で事業モデルや顧客体験そのものを変えることに責任を持つ組織を指します。

両者の本質的な違いは扱う技術ではなく、評価される時間軸と、失敗の許容度が正反対であることです。情シスは止めないことが価値で、障害を出さない月が続くほど良い仕事をしています。DX推進部門は試して外すことが前提で、打席に立たなければ何も始まりません。

この非対称性は日常の会話に表れます。新しいクラウドサービスの検討で、DX推進側が「まず小さく試したい」と言い、情シス側が「セキュリティ評価に6週間かかります」と答える。どちらも職務に忠実なのに噛み合わない――心当たりのある光景ではないでしょうか。

2. なぜ役割分担でつまずくのか―3つの構造的な理由

第一に、評価指標が別々に設計されています。情シスはシステム稼働率やIT運用コスト、DX推進部門は施策の立ち上げ件数で評価される。両者が同時に追う共通の成果がないため、協力する動機が制度上どこにもありません。

第二に、DX推進部門は後発組織であることが多く、既存システムとデータの実態を知らないまま構想を描きがちです。データが取れる前提で設計した施策が、実際には基幹システムから月次でしか抽出できないと後で判明する。その手戻りは情シスが負担します。

第三に、そもそも人が足りていません。IPAの「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント」(2026年7月16日公表)によれば、DXを推進する人材の量について「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業は合計85.5%にのぼります。両部門とも兼務だらけで、連携のための時間が制度的に確保されていません。

この構造は成果の偏りとして表れます。同調査では、AI導入の効果として「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%だった一方、「売上や利益が向上した」は3.9%、「顧客満足度が向上した」は4.5%にとどまりました。効率化までは情シス単独でも届きますが、価値創出は両部門が同じ土俵に立たないと到達できない領域です。

3. 役割分担の基本設計―何を分け、何を共有するか

分担の出発点は、業務を細かく切り分けることではなく「一次責任をどちらが持つか」を領域ごとに1つ決めることです。曖昧な共同責任は、実務では無責任と同じ結果を生みます。

領域別の一次責任と、共有すべきもの

領域 一次責任 もう一方の関わり方
既存システムの運用・保守 情シス 改修要望を業務価値の順に並べて渡す
新規サービスの企画・実証 DX推進 構想段階から実現性と運用負荷を助言する
データ基盤・データ品質 情シス 必要な粒度と更新頻度を要件として提示
セキュリティ・ガバナンス 情シス 実証段階の例外基準を事前に合意する
人材育成・スキル定義 DX推進 運用に必要なスキル要件を持ち込む

一方、分けてはいけないものが3つあります。データの所在を示すカタログ、システム全体のアーキテクチャ像、投資判断の基準です。片方だけが持つと、もう一方は毎回ゼロから確認する羽目になります。

4. 連携が壊れる3つの失敗パターンと、その先に起きること

失敗1:DX推進部門が「実証の企画屋」になる

実証実験は毎年いくつも立ち上がるのに、本番運用に移るものがほとんどない状態です。情シスは増える検証環境の面倒を見ることになり、既存システムの改善に手が回りません。数年後、経営会議で示せるのは実施件数だけ。事業側の期待は静かに冷めていきます。

失敗2:情シスが「窓口」としてしか関わらない

企画には呼ばれず、要件が固まった後にレビュー依頼だけが届くパターンです。この段階では設計の前提を覆せないため、情シスの指摘は「できない理由」の列挙にならざるを得ません。結果、DX推進側は「情シスは止めにくる部署」と認識し、次からは相談せず部門予算でSaaSを契約する。管理外のシステムが静かに増えていきます。

失敗3:データの持ち主が決まらない

顧客データや売上データについて、定義を決める人・品質に責任を持つ人が不在の状態です。同じ「解約率」でも部門ごとに数字が違い、会議は数字合わせから始まります。分析基盤に投資しても、載るデータの定義が揃っていなければ成果は出ません。基盤導入がうまくいかない案件の多くは、技術ではなくここでつまずきます。

5. 連携を機能させる4つの仕掛け

組織図を描き直す前に、次の4つを試す価値があります。いずれも大きな予算は要りません。

  1. 共通KPIを1つだけ置く:両部門の評価に同じ指標を1つ入れます。「本番運用に到達した施策の数」は企画と運用の双方が関与しないと動かず、共通KPIとして機能しやすい指標です。
  2. 企画の初期段階に情シスを同席させる:レビュー担当ではなく、構想を一緒に描く立場で呼びます。実現性の議論が早まるほど手戻りは小さくなります。
  3. 橋渡し役を正式に任命する:兼務者に「ついでに」やらせるのではなく、役割として明文化し工数を確保します。事実上の連携がこの一人に支えられている組織は少なくありません。
  4. 共通のものさしを外部から借りる:経済産業省とIPAは2026年2月13日に「DX推進指標」を改訂し、デジタルガバナンス・コード3.0に対応させました。データ活用・連携、デジタル人材の育成・確保などの要素が組み込まれています。両部門が同じ設問で自己診断すると、認識のずれが可視化されます。

まず自問したいのは「両部門が同時に喜ぶ成果を、いま1つでも言えるか」です。即答できないなら、分担の設計より先に共通KPIの設定に着手する段階です。

6. まとめ―分け方より「同じものさし」を先に決める

役割分担の議論は業務範囲の線引きに終始しがちです。しかし現場が動かない原因の多くは、線引きの曖昧さではなく両部門が別々のものさしで評価されていることにあります。ものさしが違えば、丁寧に分担表を作っても優先順位は合いません。

次の一手は、直近1年に立ち上がったデジタル関連の案件を1枚の表に並べ、それぞれ「誰が企画し、誰が運用を引き受けたか」「いま本番で動いているか」を書き添えることです。引き受け手が決まらないまま止まった案件が並ぶ箇所が、組織の断層です。半日あれば作れます。

【本記事のまとめ】

  • すれ違いの正体は業務範囲ではなく、「止めない」と「試す」という評価軸の非対称性です。
  • 領域ごとに一次責任を1つ決め、データカタログ・全体像・投資基準の3つは共有します。
  • まず共通KPIを1つ置き、直近1年の案件を1枚の表に並べて断層を可視化します。

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7. よくある質問

Q. DX推進部門は情シスの中に置くべきですか、独立させるべきですか。
A. どちらも成立し、単独で優劣は決まりません。判断材料は、事業側の巻き込みがどれだけ必要かです。既存業務の効率化が主目的なら情シス内に置くほうが連携コストは低く、事業モデルの変更が目的なら経営直下で事業部門と並走させるほうが動きます。いずれの形でも、評価指標を共通化しなければ効果は限定的です。
Q. 専任者を置けず兼務体制ですが、それでも回りますか。
A. 回せますが条件があります。兼務者の稼働配分を「DX関連に週◯時間」と明示し、その時間を他業務で埋めない合意を上長間で取ることです。配分が曖昧だと、締切のある通常業務が必ず優先され、連携業務は後回しになります。
Q. 内製と外部委託は、どう切り分ければよいですか。
A. 判断軸は難易度ではなく変更頻度です。頻繁に見直す領域(指標の定義、分析ロジック、業務ルール)は内製に寄せ、変更が少なく専門性が高い領域(基盤構築、大規模開発)は外部委託が向きます。委託時も、設計判断の根拠を社内に残す取り決めを契約段階で入れておくと、後年の見直しが容易になります。
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