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RPAとデータ活用の組み合わせで実現する業務自動化

RPAとデータ活用の組み合わせで実現する業務自動化
【この記事の要約】
- RPA単体の導入は定型作業の代行にとどまりやすく、元データが未整備のままだと、誤ったデータを速く転記する仕組みを量産するリスクがあります。
- デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査では、RPAソリューション市場は2024年度999億円から2026年度予測1,242億円へ拡大する一方、バックオフィス業務向け需要は一巡し、フロントオフィス業務へのシフトが進んでいます。
- PwCの2026年調査でも、生成AIやRPAの効果は業務やデータが未整備な状態では自動的に生まれないとされ、データ整備がRPA活用の成果を左右する前提条件であることが示されています。
- RPAとデータ活用を掛け合わせる第一歩は、自社のどの業務がどのデータに依存しているかを1枚の表に洗い出すことです。
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1. RPAとは何か、なぜ「データ活用」と掛け合わせる必要があるのか
RPA(Robotic Process Automation)とは、ソフトウェアロボットが人に代わってパソコン上の定型操作を代行・自動化する技術を指します。データのダウンロード、システム間の転記、Excelでの集計など、手順が決まっている操作を繰り返し実行します。
月末に経理担当者が複数の販売管理システムから売上データをダウンロードし、コード体系の異なる項目を突き合わせながらExcelに手作業で転記する、という光景は多くの企業で見られます。数字が合わないときは、どの時点のデータがずれているのかを探すだけで半日を費やすこともあります。RPAはこの転記や突合の操作自体を代行できますが、自動化するのはあくまで操作であり、元データの整備状況が悪ければ、誤ったデータを速く転記する仕組みを作ってしまうだけだという点に注意が必要です。
総務省が2026年7月に公表した令和8年版情報通信白書では、業務自動化の段階を、定型作業を代行する「クラス1」、AI連携により非定型業務を部分的に自動化する「クラス2」、高度なAIによって意思決定まで自動化する「クラス3」に整理しています(総務省「令和8年版情報通信白書」)。自社の活用段階を把握することが、次の一手を考える出発点になります。
なお、生成AIの進展に伴い「RPAは近い将来AIエージェントに置き換えられるのではないか」という声も聞かれます。しかし、Gartnerが2026年に公表したハイプサイクルでは、AIエージェントを既に導入済みの組織は17%にとどまり、進行中プロジェクトの40%以上が2027年末までに中止されると予測され、RPAやチャットボットを実質的な自律機能なしに「エージェント」と称する「エージェントウォッシング」の広がりも指摘されています(Gartner「2026 Hype Cycle for Agentic AI」)。Deloitteの2026年調査でも、エージェント型AIを一定以上活用する組織は23%にとどまり、成熟したガバナンス体制を持つ組織はわずか21%です(Deloitte「The State of AI in the Enterprise」)。RPAが問われているのは「AIに置き換えるか」ではなく、定型操作を確実に実行する層として、判断や例外対応を担うAIとどう組み合わせるかという点です。
2. RPA単体導入で頭打ちになる典型的な失敗パターン
RPAの導入自体は珍しくなくなった一方、活用が特定業務にとどまり頭打ちになる企業も少なくありません。
失敗パターン1:野良ロボット化
現場担当者が個人の判断でロボットを組み、作った本人が異動・退職すると誰も中身を把握できなくなるケースです。画面レイアウトの変更でエラーが出ても気づかれず、ずれた集計結果が経営会議の資料に使われ、原因究明に数日を費やす事態に発展します。
失敗パターン2:元データがバラバラなまま自動化する
コード体系が統一されないまま自動化を進めるケースです。「A社」と「株式会社A」を別の取引先として扱う補正ルールを大量に抱え込み、改修のたびに設定が壊れて手直しに追われます。
失敗パターン3:効果測定をしないまま運用を続ける
稼働時間削減効果を測定せず運用を続けるケースです。翌年度に追加投資が必要になった際、定量的な根拠を示せず稟議が通らない事態を招きます。
デロイト トーマツ ミック経済研究所が2025年10月に公表した調査では、RPAソリューションサービス市場のうちバックオフィス業務向けの需要はすでに一巡しつつあり、2024年度実績で市場全体の74.5%を占めていた同分野の比率は、2026年度予測で72.4%まで縮小する見込みです。一方、フロントオフィス業務向けの比率は24.6%から26.1%へ拡大する見通しです(デロイト トーマツ ミック経済研究所「生成AI連携により進化するRPAソリューションサービス市場動向 2025年度版」)。定型業務の代行だけを目的とした導入は、成長余地が限られつつあります。
3. RPA×データ活用を実現する5つの実践ステップ
RPAをデータ活用と掛け合わせるには、いきなりロボットを組むのではなく、以下の順序で足場を固めることをお勧めします。
- 業務とデータの紐づけ確認:対象業務がどのデータに依存しているかを洗い出します。まず自問すべきは、そのデータの発生源を担当者自身が説明できるかという点です。
- データ品質・粒度の点検:コード体系が部署間・システム間で統一されているか、更新頻度は業務のタイミングに合っているかを確認します。
- RPA適用範囲の優先順位付け:定型度合いが高く、データが整備されている業務から着手し、乱れている業務は整備と並行して進めます。
- モニタリング設計:実行ログ、エラー通知先、処理件数などのKPIを設計します。次に確認したいのは、ロボットが止まったときに誰が気づける体制かです。
- 運用ルールとガバナンスの整備:登録台帳・変更管理・権限管理のルールを部門横断で統一し、2名以上が同じロボットの中身を把握できる体制を目指します。
自動化の前にデータの発生源と品質を点検するという順序が、RPAをデータ活用の土台に育てる分かれ目になります。
4. 導入前に確認したいデータレディネス・チェックリスト
RPA導入の検討段階で、対象業務ごとに次の観点を点検すると、着手すべき順序が見えてきます。
| 確認観点 | 点検内容 | 未整備の場合に起きやすいこと |
|---|---|---|
| データの発生源 | マスタ登録・手入力・外部連携のどれに依存しているか | 手入力起点の業務は表記ゆれが多く、誤転記が残る |
| コード体系の統一 | 取引先・品目コードがシステム間で一致しているか | 突合のたびに例外処理が増え、改修のたびに壊れる |
| 更新頻度 | データの更新タイミングが業務と合っているか | 古いデータを参照し、誤った集計結果を出し続ける |
| 例外処理の把握 | 月末・期末など特殊なケースのルールが明文化されているか | 例外発生時に停止し、気づかれず放置される |
| 効果測定の指標 | 処理件数・時間・エラー率を定点観測できるか | 投資対効果を説明できず、追加投資の判断が滞る |
「未整備」が多い業務ほど、RPA導入よりデータ整備を先に着手する優先度が高いと判断できます。
5. 業種別に見るRPA×データ活用の活用イメージ
RPAとデータ活用を組み合わせた自動化は、業種を問わず応用できます。一般化した例として、以下が挙げられます。
例えば、卸売業においては、受発注データと在庫データをRPAで突合し、欠品や過剰在庫が発生しそうな品目を自動検知して通知する活用が考えられます。
例えば、製造業においては、生産実績データと品質検査データをRPAで自動突合し、規格から外れた工程を自動でリストアップする運用が考えられます。
UiPathが2026年に公表したレポートでは、エージェント型AIの価値を引き出すために事業運営モデルの再構築が必要と回答した経営層が78%に上るとされています(UiPath「2026 AI and Agentic Automation Trends Report」)。
6. まとめ
RPAは定型操作を代行する強力な手段ですが、効果を持続的に引き出せるかは、掛け合わせるデータの整備状況に左右されます。野良ロボット化やデータの不整合は、多くの場合データの点検を後回しにしたことに起因します。PwCが2026年に公表した調査でも、生成AIやRPAの効果は業務やデータが未整備な状態では自動的に生まれないとされており(PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較」)、自動化とデータ整備は切り離せない取り組みです。
【本記事のまとめ】
- RPAの効果は元データの整備状況に左右されるため、自動化より先にデータの発生源とコード体系を点検することが欠かせない
- 野良ロボット化を防ぐには、実行ログ・エラー通知・効果測定の指標をあらかじめ設計し、部門横断のガバナンスを敷くことが重要である
- まずは対象業務ごとに、データの発生源・コード体系・更新頻度をチェックリストで1枚に洗い出すことから着手することをお勧めする
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7. よくある質問
- Q. RPAを導入すれば、データの整備は後回しにしても問題ありませんか?
- A. お勧めできません。RPAは操作を代行する仕組みであり、コード体系が統一されていなかったり更新頻度が業務に合っていなかったりすると、誤ったデータを速く転記するだけの結果になりかねません。データレディネスを点検したうえで優先順位をつけて着手することをお勧めします。
- Q. 小規模な部署でも、RPAとデータ活用の掛け合わせに取り組む価値はありますか?
- A. あります。まずは自部署の業務で使うデータの発生源とコード体系を1枚の表に洗い出すことから始められます。全社的な基盤整備を待たなくても、対象業務を絞ってデータの整合性を点検し、適用範囲を見極めることは部署単位でも十分可能です。
- Q. 野良ロボット化を防ぐには、具体的に何から手をつければよいですか?
- A. まずはロボットの登録台帳を作り、誰が・いつ・どの業務のために作ったかを一覧化します。そのうえで変更管理のルールとエラー発生時の通知先を明文化し、少なくとも2名が同じロボットの中身を把握できる体制を整えることをお勧めします。

