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サードパーティCookieに頼れない時代の顧客識別と施策設計|ファーストパーティデータで進める実践

サードパーティCookieに頼れない時代の顧客識別と施策設計|ファーストパーティデータで進める実践
【この記事の要約】
- Chromeは一律廃止ではなくユーザー選択を維持していますが、SafariやFirefoxではすでに識別・計測できない顧客が存在します。
- 識別できる層とできない層に分けて施策を設計し、成果の取りこぼしはコンバージョンAPIなどで補います。
- 施策設計の前に、外部送信規律、個人関連情報、2026年の個人情報保護法改正の順で法令の枠を確認します。
⏱ 読了目安:約8分
1. 見えなくなる範囲は、ブラウザごとに異なる
サードパーティCookieとは、閲覧中のサイトとは別のドメイン(広告配信事業者など)が保存するCookieで、サイトをまたぐ追跡や広告配信に使われてきました。イルグルムの解説(2026年2月更新)によると、Safariは2020年以降サードパーティCookieをブロックし、Firefoxもトラッキング用のCookieを既定でブロックしています(イルグルム「Cookie規制とは?」)。一方Chromeは、Googleが2025年10月17日、Privacy Sandboxの10技術の廃止とあわせて、ユーザーに選択肢を提供する現在のアプローチを維持すると発表しました(Google Privacy Sandbox「Update on plans for Privacy Sandbox technologies」)。
つまり、Chromeで一斉に使えなくなる未来は遠のいた一方、すでにブロックされた環境では、識別も計測もできない顧客が現に存在します。たとえば(想定例)、広告管理画面では成果20件なのに、自社の会員データでは30件の購入がある。ブラウザ任せの識別に頼る限り、見える顧客と見えない顧客の差は広がっていく点が本質的な課題です。
2. 顧客を識別する手段の整理
Cookie以外で顧客を捉える手段は複数あります。得意・不得意と留意点を整理しました。
| 手段 | 識別できる相手 | 向いた使い方 | 限界・留意点 |
|---|---|---|---|
| 会員ID(ログイン) | ログイン済みの顧客 | 購買履歴にもとづく個別施策、再来訪の促進 | 未ログインの訪問者は識別できない。ログインする理由(便益)が必要 |
| 自社取得の連絡先(メール・電話等) | 連絡先を同意のもとで預けた顧客 | CRMやメール配信での継続的な接点 | 利用目的の明示と同意の管理が前提 |
多くの企業の出発点は、この2行、つまり自社が直接取得したデータ(ファーストパーティデータ)です。
3. 識別できる層とできない層で施策を分ける
すべての顧客は識別できません。そこで施策を識別できる層とできない層に分けて設計します。
識別できる層(ログイン顧客・同意済み連絡先)には、購入履歴にもとづく再購入案内や会員特典などの個別施策を行い、再購入率で測ります。できない層(未ログイン・同意なし)には、流入元や閲覧カテゴリ単位で施策を出し分け、セグメントと期間単位で効果を比較します。
ここで自問したいのは、「自社の顧客は、ログインしたくなる理由を持っているか」です。識別できる顧客を増やす鍵は、技術ではなく、登録・ログインの便益設計にあります。購入履歴の確認や再注文の簡略化など、顧客側のメリットから逆算してください。
4. 広告・計測の補完手段:コンバージョンAPIなど
ブラウザ上のタグ(ピクセル)で取りこぼす成果を補うため、サーバーから広告媒体へ成果を送る仕組みがあります。代表例は、MetaのコンバージョンAPIとGoogle広告の拡張コンバージョンです。
| 手段 | 仕組み | 補えること | 留意点 |
|---|---|---|---|
| MetaのコンバージョンAPI | サーバーやCRMなどから、広告主のデータをMetaへ直接送る(Meta公式) | ピクセルで取りこぼした成果。併用時は同じ識別子(event_id)で重複計上を防ぐ | 同意しなかったユーザーの分は補えない。プライバシーポリシーへの記載と、同意なし時の送信停止が必要(リスモテック) |
| Google広告の拡張コンバージョン | ユーザーが入力したメールアドレス等をハッシュ化して送り、Googleアカウントと照合する(Google広告ヘルプ) | 計測精度の補完 | 利用規約に未同意の場合、データは収集されない(Google広告ポリシー)。入力項目の設計にも依存する |
導入方法は、プラグインや連携機能から直接実装まで幅があります。媒体横断の測定にはデータクリーンルームもありますが、月額数十万〜数百万円、導入に4〜9か月との解説もあり、大規模向けです(renue)。ただし、これらは見えなくなった顧客を追い直す手段ではなく、同意を得た顧客の成果を送る補完策です。ハッシュ化しても匿名化にはならないため、次章の法令確認が前提です。
5. 施策設計の前に確認する法令の枠
手段を増やす際は、次の順序で法令を確認します。本記事は入口の整理で、個別の判断は専門家へご確認ください。
| 順序 | 確認すること | 根拠 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 自社サイトが外部送信規律の対象か | 電気通信事業法 第27条の12 | 対象は媒介・SNS・検索・情報提供などの事業者やオンラインモール。自社商品のみを販売する小売業者のサイトは対象外。解析・広告タグはCookie不使用でも対象になり得る |
| 2 | 対象なら、送信情報の通知・公表等を行っているか | 同 第27条の12 | 情報の内容と送信先などを、通知するか容易に知り得る状態に置く |
| 3 | 個人関連情報を第三者へ提供する場合の同意確認 | 個人情報保護法 第31条第1項 | 提供先が個人データとして取得すると想定されるとき、提供元は提供先での本人同意を確認する |
根拠は、総務省「外部送信規律FAQ」、電気通信事業法第27条の12、個人情報保護委員会の個人関連情報FAQです。
個人情報保護法は2026年7月17日に改正法が公布され、施行は公布から2年以内に政令で定める日です(個人情報保護委員会)。三宅法律事務所の解説では、連絡可能個人関連情報の不適正利用・不正取得を禁じる第31条の2が新設され、現行の第31条は維持されます(解説)。Cookie IDや広告IDの扱いは委員会規則による具体化待ちです。
6. 進める4ステップ
| ステップ | やること | 具体的な作業 |
|---|---|---|
| 1 | 識別できる顧客の割合を測る | 直近3か月の購入のうち、会員IDと紐づいた購入の割合と、広告管理画面の成果との差を出す |
| 2 | 層ごとに施策を割り振る | 識別できる層には個別施策、できない層にはセグメント単位の施策を充てる |
| 3 | 法令の枠と同意を整える | 前章の順序で確認し、タグの送信先・目的と同意状況を記録する |
| 4 | 自社データで効果を検証する | 自社の購買データで施策前後を比較する |
割合が低ければ、登録・ログインの便益設計が優先課題です。
7. よくある失敗パターン
第一は、会員登録を促すだけで、顧客側の便益がないケースです。ログインしても何も変わらなければ、会員比率は上がりません。
第二は、代替手段の導入が目的になるケースです。自社データが整わないまま導入すると、費用と準備期間だけが先に発生します。
第三は、広告管理画面の数字だけで判断するケースです。見えない顧客の成果が抜け、効果のある施策を止めてしまいます。
8. どこまでやれば十分か
ここまでは専任担当がいる環境の進め方です。そうでない場合の最低ラインは、会員IDと紐づいた購入の割合を出し、ログイン顧客向けの個別施策を1本だけ実行することです。コンバージョンAPIやクリーンルームは、この段階では導入しなくて構いません。
データ整備の考え方はコネクトデータのコラムでも取り上げています。
9. まとめ
状況は変わり続けますが、方針は一貫しています。ブラウザ任せの識別から、自社が同意のもとで持つデータを軸にした識別へ移ることです。今日からの一歩は、会員IDと紐づいた購入の割合と、広告管理画面の成果との差を1枚にまとめることです。
【本記事のまとめ】
- Chromeは一律廃止ではなくユーザー選択を維持。ただしSafariやFirefoxなど、すでに識別・計測できない顧客は存在する
- 識別できる層には個別施策、できない層にはセグメント単位の施策と、二層で設計する。コンバージョンAPIなどは、同意を得た成果の補完策
- 最低ラインは、会員IDと紐づいた購入の割合を出し、ログイン顧客向けの施策を1本実行すること
顧客識別と施策設計の見直しは、データの整備と目的の設計が要点です。株式会社コネクトデータは、データ活用の現状整理から基盤整備、内製化まで一気通貫で伴走します。データ活用コンサルティングにて、進め方を無料でご相談いただけます。
10. よくある質問
- Q. Chromeが廃止しないなら、対応は不要ですか。
- A. 不要ではありません。SafariやFirefoxなど、すでにブロックしている環境では、識別も計測もできない顧客が存在します。ブラウザに依存しない識別手段の整備が必要です。
- Q. 会員登録を増やすには、まず何をすべきですか。
- A. ログインで顧客が得られる便益の設計です。購入履歴の確認や再注文の簡略化など、顧客側のメリットから逆算してください。
- Q. コンバージョンAPIを入れれば、Cookieの問題は解決しますか。
- A. 解決はしません。取りこぼした同意済みの成果を補う手段で、同意しなかった分は補えません。まず自社データの整備を優先してください。

